岡山パブリック法律事務所 – ニュースレター第26号
【平成28年度ニュースレター⑧:後見センター:パブリック品質・パブリックプライド(西尾史恵弁護士)】

約1年ぶりの事務所ニュースレターを発行しました。
発送作業は完了し,お手元にも届いていると思います。6頁と,ボリューム多めです。
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本日は,
  西尾史恵弁護士「後見センター:パブリック品質・パブリックプライド」
を紹介いたします。

【後見センター:パブリック品質・パブリックプライド】
1.概要
平成26年1月、急増する後見事件を専門的・効率的に行うため、後見センターが設立されました。後見センターには、後見業務専従弁護士2名、社会福祉士5名、管理部2名(後見事務兼務)、後見事務専従事務局8名、身上監護補助士2名(内1名社会福祉士有資格者)、後見業務補助士2名、外回り2名(訴訟関係外回りと兼務)と総勢23名が所属しています。また、専従職員だけでは増加する事件を処理できないため、訴訟業務を行いながら後見業務を兼務している弁護士や訴訟業務や総務経理を行いながら、後見事務も行っている事務局にも事件を担当してもらっています。訴訟業務補助の方にも、請求書や領収書等、膨大な重要書類を担当案件ごとにきれいにファイルしてもらっています。
これだけ多くの人員が後見業務に携わっている法律事務所は他になく、成年後見人等として稼働中の案件は、471件(平成28年7月時点)と、法律事務所としては、全国トップの件数を誇っています。
なお、後見センターの担当事件の内、142名が保佐事件、36名が補助事件であり、後見事件を除いた事件が約38%を占め、全国的にも保佐人・補助人を占める割合が高くなっています。

2.支援体制
 後見センターでは、当事者1人につき、弁護士・社会福祉士、事務局がそれぞれ担当し、「三位一体」となって連携して、本人の生活を支援しています。法律のプロである弁護士、相談援助業務の専門家である社会福祉士、後見業務に特化した事務局が法人内にいることで、リアルタイムで情報を共有し、スムーズな対応が可能となっています。
 また、一般の訴訟業務と異なり、後見業務においては、夜間や休日でも対応を迫られる場面が生じます。そのため、休日の10時~18時までと平日の夜間21時までは、県南の弁護士及び社会福祉士が当番を決めて対応しています(夜間当番・休日当番)。

3.不正防止対策
 親族後見人のみならず専門職後見人における横領事件等が社会的な問題となっています。後見事件においては、一度被害が発生すると被害額も多額となり、また被害回復も困難になる特徴があります。
 〇当法人では、率先して不正防止に取り組んでおり、ご本人の大切なお金を守る
体制を取っています。
 〇具体的には、お金の引出しを指示する人(事務局・弁護士等)と実際にお金を引出しに行く人(外回り等)を別にして、引出しについて複数人が関与するようにしています。また、「後見ソフト」という後見業務に特化したソフトを導入し、後見事務補助等が、すべての案件について、収入と支出の内容を後見ソフトに入力しています。
 〇さらに、裁判所に報告する際には、担当事務局が後見ソフト等を利用して作成した定期報告書等を、①管理部が昨年度の財産との整合性等を確認してチェックした上で、②担当弁護士がすべての内容を最終的に確認する、『ダブルチェック体制』を取っています。
〇このように、後見センターでは、ご本人の大切な財産を守るべく、引出し及び管理について複数人が関与して、不正を防止する体制を取っています。

4.政策形成訴訟
 〇認知症高齢者の急増は、報道されているところであり、認知症高齢者対策の一つとして「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が平成28年4月15日に公布され、同年5月13日に施行されました。
 〇しかしながら、専門職が質の高い後見業務を行うためには、後見人報酬の確保が必須であるにもかかわらず、そのための手当てが十分になされておりません。成年後見制度利用支援事業がありますが、市町村によっては必ずしも十分とは言えません。
とりわけ、生活保護受給者については、複雑な契約や福祉サービスを利用するため、成年後見制度の利用は不可欠ですが、専門職後見人等の報酬は、制度上、保障されておりません。
後見センターでは、政策形成訴訟の一環として、岡山市を相手に生活保護法上の費用返還決定処分の取消訴訟を岡山地方裁判所に提訴しました。
また、今後、地方公共団体等への立法不作為を理由とする訴訟提訴も検討しています。

5.後見センターの強み『パブリックブランド(品質)』
 後見センターには、以上のとおり、他の法律事務所にはない強みがたくさんあります。しかしながら、後見センターの強みはなんといっても、困っている人のために、なんとかがんばろうという『パブリックブランド(品質)』にあります。
 後見センターには、多い時は1日に何十本も、被保佐人や被補助人から、「すぐにお金を持って来てほしい」等の電話がかかってきますし、中には興奮して事務所に来られる方もおられますが、担当事務局や社会福祉士、弁護士が、当事者の話を傾聴して粘り強い対応をしています。また、後見センターでは、例えば年に1回お墓参り等の外出対応をする等して、当事者の方に寄り添った対応もしています。後見センター471件の案件には、471それぞれのドラマがありますが、少しだけ担当者の関わりを紹介します。

例① :ご本人が末期癌だと判明し、余命も短いと知った事務局は、ご本人が大好きなガンダムのプラモデルを買ってきてくれました。ご本人はとても感動して喜ばれ、最期までガンダムのプラモデルを大切にされました。そしてご本人が大切にしていたガンダムは遺族の方が大事に持ち帰られました。
例② :精神科病院の保護室に入院中の器質性精神障害の方は、市販されておらず入手困難な本やCDを要求されますが、愉しみがないご本人が少しでも喜んでくれたらと、担当事務局は、インターネットやあちこち探し回って、ご本人が希望するものをなんとか入手してくれました。ご所望の物を持参すると「ありがとう」と笑顔で対応してくれました。
例③ :施設に閉じこもりっきりのご本人が、外出希望があることを知った身上監護補助士は、バラ園にご本人を連れて行ってくれました。施設では、いつも泣いてばかりのご本人ですが、バラ園ではたくさんの花に囲まれて笑顔を見せてくれました。
例④ :お誕生日が近い被保佐人が遠慮してプレゼントの希望を言われないため、身上監護補助士はお誕生日にケーキを持って行ったらどうかと提案してくれました。担当事務局は、施設にご本人がケーキを食べてもいいか確認し、施設近くのおいしいケーキ屋を調べてくれました。担当社会福祉士がお誕生日にケーキを持参したところ、ご本人はとても嬉しそうにケーキを食べられました。
例⑤ :在宅で暮らす成年被後見人が認知症のため、徘徊して行方不明との連絡を受け、担当弁護士及び社会福祉士がご本人を探しに出掛けようとした際、「少しでも多くの目があった方がいいから」と後見事務補助もボランティアで探しに行ってくれました。なかなか見つからず心配されましたが、ようやく夜中2時に警察からご本人を保護しているとの連絡が入り、担当者らが迎えに行って、自宅まで送り届けました。
例⑥ :洋裁が趣味のご本人ですが、手が震えるため針を使うことができずストレスが溜まっていたところ、担当社会福祉士は「針を使わずにできる刺繍キット」を探してくれ、事務局がインターネットで購入してくれました。刺繍キットのやり方を覚えたご本人は、とても上手に仕上げられ、施設の方からもご本人が明るくなったと言われました。
例⑦ :長年、精神科病院に社会的入院し、退院は困難だと思われる方を、社会福祉士は障害のサービスになんとかつなげ、何名も退院することができました。退院した多くの方は生きづらさを抱えながらも、たくさんの支援者に支えられ、何とか在宅生活を維持しています。

  これらのエピソードは後見センターの業務のごくごくわずかな例にすぎません。できることはそれぞれ違うものの、「ご本人」のために何かできることがあればなんでもやろう、対応が困難な案件でも、パブリックが関わったことで、少しだけでも生きやすくなるのであれば、なんとか後見センターでがんばろう、そういう熱い想いを持って仕事をしている『パブリックブランド(品質)』が後見センターの何よりの強みなのです。

  最後になりましたが、後見センターのキャッチフレーズを紹介します。

『広げる つなげる 支援の輪   
    想いをつなぐ パブリック』

岡山パブリック法律事務所 – ニュースレター第26号

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