「星空の下で」レナード・レーデル・ヘルムリッヒ,2010年

インドネシアの,両親を亡くし叔父夫婦と暮らすアリと,孫娘アリのために田舎から出てきて同居する祖母の家族(シャムサディン家)を映したドキュメンタリーです。
「阿仆大(アプダ)」があまりに素晴らしかったので,もうしばらくこれほどの感動を映画で得ることはないんじゃないかという気持ちになっていたのですが,また私にとって本当にかけがえのない映画と出会うことができました。
冒頭は,インドネシア大統領の辞任や,イスラム教とキリスト教の関係といったマクロな描写から始まり,星の光を草の雨露に反射する光に移すという素晴らしい演出を経て,田舎を発ってジャカルタに住む孫娘アリの下へ旅立つシーンに続きます。線路の途中で汽車を停めようとしたのに停まってくれず(怒られます。),駅までバイクで連れてってもらうのですが,そのバイクのシーンがもう面白くて面白くて,思い出してもにやけてしまいます。
他にも,卒業式に出るためにおめかししたアリが馬車に乗るのを嫌がるシーン,闘魚を育てて一攫千金を狙っている叔父とその奥さんの夫婦喧嘩とか,久しぶりに映画観ながら声を出して笑ってしまいました。
また,両腕のない女性が道路脇で携帯電話を架けるシーン,ゴキブリの視点で描かれるゴキブリ駆除のシーン,キリスト教を信じる祖母がイスラム教を信じる長男ドゥイの子バガスを初めて教会に連れていくシーン,BATMANのTシャツを着たバガスが服を両手に持って町中を走り回るシーン,アリが初めて叔父から叩かれて説教されるシーンなど,忘れることのできない非常に印象的なシーンもありました。
大変シリアスな家族のシーンでも,カメラがものすごく近くにあって描写されるので,登場人物の全員に感情移入できました。監督は12年間この家族の人生を追っているらしく(本作が3部作の完結編),この家族からどれだけ信頼されているんだろうかと思いました。
そして,そういったシーンに加えて,人が不在の美しいシーンの使い方があまりにも詩的でして,特にラストに向けた田舎の情景は,冒頭からのシーンの伏線が効いてて,涙なしでは観ることができませんでした。
私に,こんなに素晴らしい映画と出会うという幸せを与えてくれた全ての方々に感謝したい気持ちです。
今後,日本国内で上映されるかどうか現段階で分かりませんが,ぜひ多くの人にこの感動を味わって欲しいと思います。

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所属:津山支所