河直美「玄牝」

シネマクレールで「玄牝」(げんぴん)観ました。
大学生の頃,次の日の授業をさぼって深夜から朝まで映画ばっかり観てました。当時シネマ・チューズデイっていう深夜のちょっとマイナーな映画を流す番組が大好きで,そこで「につつまれて」「かたつもり」と出逢いました。それ以来,河直美が大好きになり,ほぼ全ての作品をスクリーンで観てると思うのですが,それぞれの作品とそれぞれの映画館の思い出が強すぎて,いつも新作を観るときは,ちょっと感情過多でどうしても平常心で観れない感じになっちゃいます。今回も違う映画の予告編のときから泣いてしまいそうでした。
「玄牝」は,愛知県岡崎市の産婦人科吉村医院についてのドキュメンタリーで,吉村正先生,「古屋」に集まる自然なお産を望む妊婦,そして吉村医院のスタッフにカメラが向けられます。たまに河も中立性を捨てて質問したりしちゃったり,意見を言ったりします。デジタルカメラではなく16mmフィルムで撮られており,相当時間をかけて信頼関係を作り上げた上で撮影したんだろうなあと思いました。
登場する妊婦さんは,後ろ向いてスクワットしたり,泥臭かったり悲しかったり情けなかったり泣いちゃったり,美しかったりで。ある妊婦さんがピアニカの曲で泣いちゃったりするシーンを妊婦さんの後ろから撮ってるシーンとかもう涙が止まらなくて困りました。
そして,いつもどおり絶妙なリズムで美しい草木葉花虫光犬火石etcが挿入され,その画面に重ねられる様々な音もあまりに素晴らしいです(音響設計は菊池信之なんです!!)。鍬で土を掘る心地よい音を印象づけるためにブルドーザーで掘削する音を対比したりする編集も素敵ですし,カマキリが動くシーンなんて自然と泣いてしまいました。
「ありがとう」という言葉が耳の奥に反芻するとともに,挿入された自然の映像がみずみずしく残ったまま,「伝えること」「続けること」「生きていること」について言葉にならない感情があふれかえりました。
しばらく映画館行ってなかったのに,またすぐに行きたくなっちゃった。。。

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所属:津山支所