あんしん終活センター座談会
あんしん終活センター座談会

江口:弁護士の江口です。終活センターが立ち上がったのは平成26年ですが、当初、私はメンバーではありませんでした。当時は、現在終活センターが取り組んでいる任意後見を担当する「任意後見PT」のメンバーとして、終活案件に関わっていました。
その後、あんしん終活センターのセンター長を務めていた森岡先生がパブリックを退所されることになり、令和2年に私がセンター長に就任しました。それ以降、終活センターの業務に携わっています。
祐源:事務局で、東部所属の祐源です。ちょっといつからかはっきり今思い出せませんが、江口先生より後です。会議のメンバーと個別案件をいくつか担当しています。
尾﨑:社会福祉士の尾崎です。センターとの関わりはセンター設立時からとなります。これまで何件か個別案件の担当もさせていただきました。
江口:パブリックでは、後見事件を大きな柱のひとつとして取り組んできました。さらに法人として新たな柱を築き、より幅広いニーズに応えていくために、取り組んできた専門分野ごとのセンターを立ち上げることになりました。その結果、交通事故センター、中小企業センター、労働センターに加え、「あんしん終活センター」を新たに設立しました。
江口:現在、終活センターには本部のメンバーだけでなく、支所のメンバーにも加わってもらい、事務所全体で終活に関わる業務を統括する体制で運営しています。
江口:弁護士は私を含め5名、社会福祉士5名、事務局6名の合計16名です。終活センターメンバー以外の方も、終活案件を担当していただいているので、実際に終活の業務に関わっていただいている方はもっと多くなりますが、終活センターのメンバーとしては先ほどお伝えした人数になります。
江口:終活のご相談の中には、施設入所や入院の際に「保証人がいない」というケースがあります。パブリックは弁護士法人として直接保証人になることは控えていますので、そうした場合はNPO法人「あんしんコミュニティ」に相談し、保証人を引き受けてもらう形で対応してきました。
もうひとつは「パブリック友の会」です。正式名称は「弁護士法人岡山パブリック法律事務所と障がいのある本人、家族をつなぐ友の会」で、パブリックが直接設立したものではなく、障がいのあるお子さんを持つご家族が代表を務めています。
終活センターとしては、ご本人が亡くなった後の葬儀や供養に関する支援だけでなく、お子さんに障がいがある場合に「自分が将来対応できなくなったらどうしよう」という不安を抱えるご家族のサポートも重要だと考えています。そこで、こうしたご家族に友の会に入会していただき、事前にパブリックとつながりを持ち、情報を共有してもらうことで、将来自分が動けなくなったときにもスムーズに支援が引き継げる仕組みを整えています。
江口:「友の会」では、基本的に年2回「&の集い」を開催しています。
1回は講演会、もう1回は交流会として行い、会員の皆さまとパブリックの職員、友の会の運営メンバーや協力者が一堂に集います。
交流会では、グループに分かれてテーブルごとに、日常生活で感じている不安や心配ごとについて気軽にご相談いただける場を設けています。
さらに「もう少し具体的に相談したい」という方には、個別相談へとつなげることができ、実際に後見人の手続きに発展するケースもあります。
尾﨑:1つ目が、当事務所の成年後見業務は、弁護士と社会福祉士と事務局の 3人で、お一人の方を担当するという仕組みになっていて、役割分担をしながら、それぞれの専門性を活かした業務をやるというスキームがあるので、そのスキームがそのまま、あんしん終活センターの業務でも活かしていけるということ。 2つ目が、4つの柱を含めて、成年後見の取組みの中で得られたノウハウが、ほぼほぼ、終活の業務にも活かされる。契約の形態は違えど、やっている中身はこれまで成年後見業務で積み上げてきたノウハウが、活用できるということ。3つ目は、多くの成年後見事件をやっていく中でのさまざまな社会資源としての施設やサービス事業所等の、地域のいろいろなところとの繋がりを、活かすことができるということ。大きく分けると、この3点が、後見業務での経験で役立ってくることなのかなと思います。
尾﨑:そうですね。終活も後見も、言ってみれば、暮らし・生活・人生への支援と伴走ということなので、後見業務の経験とか、知識とか知恵が蓄積されている業務という点で共通しています。それを活かして、おひとりおひとりの権利と尊厳がまもられ、その方らしい暮らしと人生の実現に寄与していきたいと思います。
江口:見守り契約は、死後事務委任契約や遺言書作成、任意後見契約を依頼された方が、同時に締結されることが多い契約です。
契約をすると、パブリックの担当者が定期的に依頼者の方と面談をしたり、電話で近況を伺ったりします。遺言書や死後事務委任契約を結んだあとに「そのまま放置」するのではなく、定期的にお会いして「体調や生活に変化がないか」「契約時の意向に変更がないか」を確認していきます。実際、終活に関する希望は、契約した時から年月が経つにつれて気持ちが変わることも多いので、「本当にどうしてほしいのか」を継続的に確認できる点は大きな意義だと思います。
また、高齢の方の場合、契約時には認知症の症状がなかったとしても、時間が経つと判断力が少しずつ低下することもあります。そうした時でも、定期的にお会いすることで再確認ができ、担当者の顔や人柄を知っていただくことで、信頼関係を築いていくことができます。
さらに、見守り契約には具体的な生活支援も含まれます。たとえば、依頼者が体調を崩して入院する際には、入院手続きや自宅からの必要物品の搬送などの緊急対応を行います。その他にも、お墓参りへの同行、ペットを飼われている方の預け先探しの同行、入院時に病状説明を受ける際の同席なども行っています。
江口:大きな違いの1つは、入院手続まで対応できる点です。民間サービスでは入院手続までは行わないこともありますが、パブリックでは入院手続まで対応しています。
また、施設入所や入院の際に保証人を求められることがありますが、パブリックはNPO法人あんしんコミュニティと連携しているため、保証人が必要な場合にも対応することができます。
さらに、違いというより大切にしている点として「信頼関係づくり」があります。法律事務所は敷居が高いと感じられることもありますが、定期的にお会いしてお話を重ねることで安心して信頼していただける関係を築くことを大切にしています。特にパブリックにはソーシャルワーカーが在籍しているため、依頼者の方にとってもより身近に感じていただき、相談しやすい環境が整っていると思います。
江口:そうですね。定期的にお会いすることで信頼関係が築かれていくという大きな利点があります。契約したまま長期間会わないと、ご本人自身がどのような遺言を作成したかを忘れてしまうこともあります。定期的に面談することで内容の再確認ができ、また担当者の顔や人となりを知っていただけるので、より深い信頼関係をつくることができます。
法律事務所というと敷居が高いと感じられる方も多いですが、見守り契約ではソーシャルワーカーが対応することも多く、日常のちょっとした困りごとでも気軽にご相談いただけるようになります。実際に担当しているケースでも、継続的な面談を通じて「安心して相談できる」と信頼を寄せていただく例が増えていると実感しています。
江口:そうですね。死後事務委任のご依頼をいただくことは、依頼者の方にとっては人生で初めての経験になります。ご自身が亡くなった時に、葬儀をどうするのか、供養をどうするのか――ご家族の葬儀を経験された方はいても、自分のことを自分で決めるのは誰にとっても初めてのことです。そのため、多くの方が「どう判断すればよいか分からない」と迷われています。
私たちパブリックは、後見人として葬儀や供養の手続きを数多く担ってきた実績がありますので、葬儀の流れや具体的な選択肢についてしっかりと把握しています。依頼者の方には「こういう方法がありますよ」と選択肢を提示できるだけでなく、その判断に迷う場面での意思決定のサポートも行っています。
意思決定支援には専門性が必要ですが、私たちはソーシャルワーカーを中心に、後見人として本人の意思を最大限尊重しながら支援を重ねてきました。その経験とスキルを活かし、死後事務においても、葬儀や供養、ご家族との関わり方をどう考えていけばよいか迷う依頼者の意思決定に寄り添いながらサポートしています。単なる「死後事務の受任」ではなく、依頼者が自分らしい選択をしていけるよう共に歩む姿勢を大切にしています。
祐源: 2点あります。1点目が、先ほど見守り契約の中で江口先生から話があったんですけど、ペットの引き取り先を探している方が、一定数おられます。死後事務の中で終生飼育してくれる団体や里親探しをしてくれる団体に、自分が亡くなった後、大切なペットを引き渡して欲しいというようなご希望があることがあります。その中でも(⇐「その中でも」という文章、ここはこのままでもよいか?)、見守り契約の 一環で、引取り先の調査とか、見学に同行したりするんですけども、ご本人さんは、結構、もう何でもいいよって感じで決めるのではなく、どこがいいかなっていうのを結構悩まれて決めていまして、家族の一員として、自分のこと以上に考えているんだなあというのを感じて、印象に残っています。
2点目が、遺言の作成にあたり、法定相続人への遺言を作られる方が、一定数おられます。お子さんや配偶者に負担をかけたくないからということで、遺言や遺言執行、死後事務を依頼したいと考えたれる方がおられるということが印象的でした。一般的には、法定相続人じゃない人に渡したいとか、どこかに寄付したいとか、なんかちょっとマイナスイメージだったりすることもあると思うんですけれども、相続人である家族を思って作成されることもあるんだなあというところが、印象に残ってます。
尾﨑:私が印象に残っているのは、Aさんという高齢の女性の方です。Aさんは、医療従事者だったんですけども、私は、Aさんが高齢になり、お一人で、健康に不安を抱えるようになってから、関わらせてもらいました。Aさんの願いは大きく分けると3つぐらいあって。
1つ目は、穏やかに暮らしていたいということと。 2つ目は、終末期医療のご希望は、医療という医療は全て利用して、できうるすべての医療処置を行ってほしいという願い。3つ目は、残された財産に関する願いです。Aさんはお子さんなど相続人が全くおられなかったんですけど、ご自身の仕事での経験の中から、さまざまな困難を抱える子どもたちに使ってほしいという3つの願いがありました。1つ目については、見守り契約をし、認知症も発症されたので、任意後見監督人選任の申立てをし、任意後見人としてAさんが穏やかに過ごせる環境として、有料老人ホームの選定や、日々の暮らしのモニタリングや支援者との会議、毎月の面会などを行いました。Aさんの終末期医療のご希望である、とにかくありとあらゆる医療を受けるという2つ目の願いについて、当初は医師も消極的な部分もありましたが、弁護士と一緒に対応させてもらって、医師の理解を得て、最期を迎えることができました。。3つ目の子供のためにという願いについても、Aさんがまだお元気なうちにいろんな団体の方と直接会ってもらって、寄付先を三か所決めました。県内の3つの団体の、虐待を受けた子どもたちへの支援など、様々な活動をしておられる団体に、お亡くなりになられた後に引渡しをさせてもらって、それぞれの団体の方からも、Aさんのお気持ちに本当に感謝され、良い形で使っていただいているという話を、後で聞くんで、そういった意味では印象に残っております。
江口:事業の発展そのものよりも大切なのは、現在ご依頼いただいている方や、これからご依頼いただく方お一人お一人に対して、パブリックに依頼してよかったと思っていただける対応を行うことです。時には、「こうした対応が十分できていない」「もっと支える方法があるのでは」と課題が見つかることもあります。
私たちは、そうした課題一つひとつに丁寧に向き合いながら、「あんしん終活センター」と名付けた通り、依頼者の方が安心して任せられる体制を着実に整えていきたいと考えています。
江口:事業戦略として進めているというよりは、業務を行う中で出会った方に「一緒に何かできませんか」と声をかけ、快く応じていただくことで連携が生まれてきた、というのが実情です。葬儀社さんや友の会の関係者も同じです。
重視しているのは、事業戦略ではなく「人」です。この人と一緒に仕事をしたいと思える方とつながることが、現在の連携の形になっています。そして、そうした人とのつながりを基盤にしているからこそ、質の高い支援が実現できています。今後もこの方針で、良い支援を届けられるよう進めていきたいと思っています。
江口:はい、案件は今後も増やしていけるように考えています。
江口: はい。パブリックは法人として対応しているため、もし担当者に何かあっても別の担当者に引き継いで対応することが可能です。法人自体が継続している限り、長期的かつ安定した支援を提供できることが大きな強みだと考えています。
さらに、一般社団法人おかやまCaReという新たな法人の設立も行いました。パブリック内部だけでなく外部のソーシャルワーカーとも協力しながら終活のことに対応できる体制を整えています。こうした体制によって、今後の多様なニーズにも柔軟に対応していくことが可能だと考えています。
尾﨑:これまでの私たちの活動のなかで繋がっていなかったのは、その時点ではまだ権利擁護ニーズが顕在化していない方と出会う場やチャンネルです。その場やチャンネルとして、1つが、パブリック友の会であり、1つが、終活センターを通じた活動っていうところです。権利擁護ニーズを顕在化させない、つまり予防的権利擁護ですね、単身世帯とか、高齢者のみの世帯が、どんどん増えていっている中で、孤独孤立っていう問題に対して、きちんとアプローチをして、これ以上は糸を絡ませないというか、こじれて重大な問題につながっていかないように、予防的に関わらせてもらうことは、意義のあるものだと思います。また、きちんと顔の見える関係で、良質な支援を提供することは、社会としても求められていることです。これまで20年間、地域のさまざまな方に支えられ顔の見える関係を地域の中で拡げてきた岡山パブリックが、こうした点においても役割を担っていけるといいなと思います。










